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2011/02/14

ブルーバレンタイン



「この想い伝えるには年に一度のチャンス」奈麻子は心に強い決心を抱いていた。
 デパートのチョコレート売り場の賑やかなデコレーションが乙女たちの心を高揚させている。義理チョコとわかる店でもラッピングを変えている。奈麻子はチョコの購入をせずに、メッセージカードだけを購入した。そうこのメッセージカードに想いを託すのである。
 こうして奈麻子は足早に家路を急ぐ。365日の中でも一番重要な日、それが明日に迫っているのだ。うれしさと緊張が交錯し、胸は今でも張り裂けそうだった。

 奈麻子の視線はレシピとまな板との間をを忙しく往復させ、手作りチョコと格闘していた。既製品ではなく、手作りチョコの方が彼の心を射止めるのだ、とテレビのコマーシャルでもやっていた。菓子など作ったことのない奈麻子ではあったが、不器用な手つきでチョコをつくっていた。お母さんも心配そうに台所から覗いているのだが、奈麻子はそれにも気づかぬほど集中していた。
 3度目の挑戦で、やっとあげられるチョコが完成した。指紋がついてしまっているのだが、それも愛嬌のしるしなのだ。闇夜だと思っていた窓の外はすでに白み始めていた。
「もう夜明け近いんだ」奈麻子は満足げにつぶやいた。
「絶対にうまくいく。だって双子座に木星が明日から入るんだから」そう言いながら奈麻子は束の間の休息を摂ろうとした。
 枕の下に、彼の名前を隠す。
「神様、私にたった一度の勇気をください」歓喜と不安が合い混じる妄想の中で、奈麻子は眠れずにいた・・・・・・


 冷たい風が駆け抜ける日、空は抜けるように青かった。
 放課後に待ち伏せするか、下駄箱に入れようか、奈麻子は決めかねていた。休み時間も落ち着かず、友達との会話も上の空だった。
 かばんの中にチョコが入ったまま放課後になってしまった。そのとき、下駄箱へ向かう廊下で彼と出会って心臓が跳ね上がりそうになった。
 しかし、彼の周りには6、7人の女の子が巻きついていた。
「私のチョコから食べてよー」
「ずるい、私はせっかく手作りしてきたんだからさあ」
 そのまま彼を含む集団は奈麻子の傍らを抜けていった。彼はサッカー部のキャプテン。学校でも1、2位を争うほどの人気っぷり。ライバルが多すぎてきっかけもつかめない。
 奈麻子はほかの女の子のように、はしゃいでチョコを渡すことなんてできなかった。
『奈麻子さんだね、ずっと君のことを見てたよ』などという漫画のようなシチュエーションがあるわけない。それは分かっていたんだ。これは現実の世界なんだということが。
「星占いなんかだいっ嫌い!」奈麻子は足早に校門を駆け抜けていった。

 奈麻子は自分の部屋に入ると、かばんからチョコレートを取り出した。きれいにしたラッピングが何か滑稽に見えた。
 一人でハート型のチョコレートをかじる。
「あれ? こんなに苦かったかなぁ。ははは、こんなチョコじゃどっちみち食べてくれなかっただろうな」
 奈麻子は泣きながらチョコをかじり続けた。渡せずによかったと自分を慰めていた。

「おめでとう! My Blue Valentine!」


という歌があるのをみなさんご存知ですか? 北条です。

けっこうお気に入りだったので、再掲です。
この歌はかの有名な嘉門達夫氏の隠れた名曲「ブルーバレンタイン」です。

川口浩志だの替え歌だの鼻から牛乳などと歌っている氏の珍しいバラードです。

最初聞いたときはどこかに笑いどころがあるんじゃないかと疑いましたが、そんなもの一切ない切ない曲です。ファンの間でも評価が高い曲です。この人も好きな曲だと言ってくれました。

今は廃盤になっている天賦の才能というアルバムにのみ存在する曲です(もったいない)。

上の文章は<完>と書きましたが、実は続き(いわゆる3番)があって、社会人になった彼を街で見かけるんですよね。そのとき、強くなった奈麻子はどうするのか! それは聞いてからのお楽しみということで。

あぁちなみに奈麻子って名前はUSO8oo得意のオリジナルキャラなんで。


ということで、チョコが渡せなかった女の子は北条さんに「私をあげます」ってパジャマ画像とか送るといいと思うよ
(殴られて青あざが出来てブルーになった「My Blue Valentine」)