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僕はモテない。
キムタクが100モテるとするのなら、広島東洋カープのキムタクが10モテくらい。変態ヤマタクが3モテくらい。親友の山岡(ブ男だけど家が金持ち)ならば1モテくらい、そうだとするならば僕のモテ度には数値がつかない。それほどに僕はモテない。
顔も悪ければ性格も卑屈で陰湿、おまけに何の取り柄だってない。そう、僕はクラスの女子はおろか、お母さん以外の女子と口を利いたことがない。
クラスの女子は僕を蔑み、笑いの対象として揶揄して自分らのつまらぬ会話を潤す。どいつもこいつも、人を蔑むことでしか笑えない最低のヤツらだ。
全てが万事こんな調子だから、どうやら僕に恋愛をする資格は与えられていないらしい。僕が好きだなんて告白したらその女の子が可哀想だし、誰だって貧乏くじを引いてしまったと思うのではないだろうか。そう、何も出来ない僕には恋愛する資格すら与えられていないのだ。
実際の恋が無理でも、僕らには妄想がある。妄想ってのは非モテの僕にとって最大の武器だ。妄想の世界は何でもありだし、僕だって恋し放題。毎日毎日バカな女どもが入れ替わり立ち代わり「抱いて」と僕に言ってくる。
つまらない日常、吐き気がするほどウンザリする繰り返しの毎日。日常に疲れた僕は、妄想の中で恋をすることだけに生きていた。
様々なシチュエーションの恋愛を妄想の中で経験した僕は、すっかり恋愛の達人になっていた。ドロドロの不倫も経験したし、現役アイドルとも付き合った。ワガママ娘もいれば、ビックリするほど大人しい女とも付き合った。あなたがいれば何もいらないと言う女もいれば、ブランド物に対して野生動物のように執着している女とも付き合った。もちろん全て妄想の中で。
色々な女と恋愛を経験することで、自分が真に必要とする相手を見つけることができる。少なくとも僕はそう思っている。色々なものを経験してこそ初めて自分にあったものを見つけられるのだ。
妄想の中で色々な恋を経験した僕は、「僕がいないとなにもできない女」「それでいて僕の体の一部のような女」「それでいてかなり美人」に憧れた。どうやら僕にはそういう女が合っているみたいだ。そんな女が可愛くて仕方ない。
「あーあ、どっかにこんな女いないかな」
今日も僕は妄想恋愛の産物である、フィニッシュであるオナニーにあけくれる。まだ見ぬ理想の女性との痴態を思い描き、一心不乱に己のチンコを摩擦し続ける。
「痛いわね!もっと優しくしてよ!」
どこかから女の声が聞こえた。
「もう、毎日毎日何回も何回も。これじゃあ擦り切れちゃうわ!」
どうやら僕の頭は狂ってしまったらしい。妄想のし過ぎで狂ってしまったらしい。何故だか、今右手に握っている自分のチンコから女の声が聞こえるのだ。
「まさかな・・・幻聴だろ」
オナニーしながら独り言を発するほど情けないことはないのだけど、ついつい口に出てしまった。しかし、これは妄想でも幻聴でもないことにすぐ気がつかされてしまうことになる。
「はじめまして、わたしチン子」
いつもは血管ぐらいしか浮かび上がらない僕のチンコに、綺麗な女の顔が浮かびあがっていた。おまけに尿道口をパクパクさせて言葉を発している。
「もう、たまにはチンカス掃除くらいしてよ!臭くて嫌になっちゃう」
「あ、ごめんなさい。すぐやります」
オナニーを中断した僕は、たまりにたまたチンカス掃除を始めた。綿棒をつかって優しく優しく、カリにたまったチンカスを掃除する。
「あ、そこそこ。気持ちいいわー。あなた優しいのね」
そう言葉を発するチンコ、いやチン子に僕は途方なく感激していた。かなり美人だし、おまけに僕がいないとチンカスすら掃除できない、さらには自分の体の一部のような女どころか、モロに僕の体の一部が女だ。これぞまさに僕の求めていた理想の女なのだ。
そう、自分の生殖器と恋に落ちてしまうという有り得ない出会いだったけど、僕はすっかり彼女に夢中になっていた。
それからは、彼女との楽しい共同生活が始まった。
「恥ずかしい見ないで見ないで!ああ、でちゃう!」
と小便をするたびにチン子は大騒ぎ。
「これでも私だって、女よ。化粧だってしたいわ」
そう駄々をこねる彼女のために、チンコに白粉を塗り、尿道口に口紅を塗ったこともあった。こうしてうまくやってきたのだった。
非モテで、妄想の中でしか恋をすることが出来なかった僕だけ、やっとこさ現実の恋を手に入れた。そんな気がしていた。
しかし、そんな幸せな生活もそう長くは続かなかった。幸せな生活とは、ある日突然破綻をきたしてしまうものなのだ。
「どうして!どうしてこんなに愛してるのに!私のこと抱いてくれないの!」
いつになくチン子は激怒していた。自身の普段の2倍ほどに怒張させ、血管を浮き立たせて起こっている。顔だって真っ赤だ。
「だってキミは生殖器じゃん。生殖器に生殖器を入れるってどうやるんだよ」
「そんなこと言ってるんじゃないの!本当に愛しているのなら抱けるはずよ!」
「でも・・・」
どんなに頑張っても、無理なものは無理だ。僕だって愛しているチン子を抱けないことは苦しい。でも、それはお互い理解しあった上での恋じゃなかったのか。それを、いまさら騒ぎ立てるなんて。
「もういいわ!さよなら!」
そういうと、怒張していたチン子は急に萎み始めた。そして浮きだっていた血管も、彼女の顔も消え去っていた。
「チン子?なあチン子?嘘だろ?返事してくれよ!」
必死に呼びかけ、左右に揺すったり、引っ張ったりしてみたのだが、二度とチンコがチン子となることはなかった。
妄想の世界で恋愛をしてきた僕は、相手の気持ちを考えることができなくなっていたらしい。自分本位に考え、チン子のことなんて全然考えていなかった。いつのまにかチン子全てを理解してくれていると理想の妄想に取り付かれていたのだった。
「ごめんよ・・・チン子・・・俺、間違ってたよ」
夕焼けの6畳半の一室。僕は自身のチンコを左右の手で優しく包んでいた。
妄想の世界に生きるのは簡単だ。辛い現実を忘れ、自分だけのユートピアに逃げ込むことは簡単なのだ。でも、それは何も解決になっちゃくれない。妄想世界で手に入れたものなんて、ピーターパンの帽子よりも価値がないもの何だ。そう、問題は辛い現実の中を生きていくこと何だ。
チン子は僕に現実を生きることの大切さを教えてくれた。妄想世界に逃げ込む僕を、引っ張り戻してくれた。有り得ない出会いだったけど、物凄く感謝している。ありがとう、チン子。
俺、明日から現実の恋をしてみるよ。俺みたいなヤツはなかなか恋も成就しないだろうけど、それでも頑張ってみようと思う。そう、現実世界だって恋をするのは自由なんだから。すべての人に与えられた権利なのだから。
「ありがとう、チン子、俺、頑張ってみるよ!」
今はもう動かないチン子に向かって、僕は涙を流しながら宣言した。チン子のためにも頑張るぞ、と。
その一部始終をドアの隙間から覗いていた母親が、次の日僕を精神病院に連れて行ってくれた。
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